「古鏡」から学んだこと縁あって手元にやってきた「古鏡」。この200年近く昔の尺八によって私の尺八観は大きく変わることになりました。江戸時代に作られたこの竹はおそらくどこかの虚無僧が吹いていたのでしょう。お経を上げる代わりに尺八を吹く行為は「演奏」というより自分の内面を見つめる「修行」です。誰かに聞かせるのではなく自分の出した音に深く入り込み「一音成仏」の音を求めてやまなかったのだと思います。古管を吹くときには「吹いてやろう」「鳴らしてやろう」という気持ちで強い息をいれると竹がいうことを聞いてくれません。「竹に鳴ってもらう」ために必要なだけの息を静かに送り込むのが最重要ポイントです。古管は浅い歌口エッジで指孔も小さく、そもそも大きな音を出すようにはできていないのです。息の速さは遅くても鳴ります。肺の中の空気と尺八の中の空気が繋がって一体感を持つように吹くことによって柔らかな音が豊かに響きます。現代の尺八は進化して音量大きくなり機能性も上がりました。倍音もビンビン出て音色も多彩になりました。これを否定するわけではないのですが、1日の終わりに静かに尺八を吹きたい時には、この古い尺八の音色が心を癒してくれるでしょう。静かに吹いていると時間を忘れてしまいそうです。地無し尺八を「古管」の音色にする今回の素材となった尺八は無銘ですが柔らかい音色がとても魅力的でした。ただ全長が１尺８寸よりも短く筒音がDよりも高いため使い勝手のわるいものでした。正しいピッチにするには全長を15mm位伸ばす必要がありました。一般的に筒音を直すには歌口から数センチの部分で切断して別の竹を継ぎ足すという方法をとります。ですがこれは私にとって難しい方法です。そこで何度か経験済みの方法、歌口を取り去ってしまい新たに「尺スタ」をはめ込みながら全長を伸ばすという方法をとることにしました。尺スタは現代尺八の形状なので天口の傾斜が急ですが、その角度を古管の音色に近づけるために緩くしながらエッジ深さも浅くしました。この歌口は古管の吹き方である「メリ吹き」に適した形です。（数年前古管研究で有名な志村哲先生にお会いした時「古管の基本はメリ吹きである」と教わりました。）「地無し尺八」特有の幽玄自在な深みのある音は「メリ音」によるところが大きいのです。調律は伝統調律ですが再調律の過程であえて指孔を小さくしました。伝統調律の「チ」の高さは吹き方で矯正することは容易で、むしろ慣れれば音の繋がりが心地よい場合もあります。また指孔が9mmと小さいですが半音を出すのに全く支障ありません。大きな音が出すこともできますがあくまで音色重視です。管尻孔も少し狭めました。このように現代尺八とは対極にある手法で改造を加えたことによって、古管独特の味わい深い音色を再現することが可能なハイブリッド尺八ができたと思います。名著「日本の音楽と楽器」（ビゴット著服部龍太郎訳）副題にあるとおり明治二十年代に来日したイギリス人のビゴット卿が日本の音楽について考察した歴史的にも貴重な記録です。あらゆる和楽器に対して興味深い内容が記されています。尺八についてはあの有名な「旅先の湖のほとりで偶然耳にした尺八の音に魅せられたエピソード」も記載されています。この本を読んだら尺八の音色の重要性について深く考えるようになると思います。【諸元】長さ535mm重さ200g頭部直径34mm 底部直径42mm歌口内径縦21mm横21mmエッジ深さ3mm弱最大指孔9mm（留意事項）PC動作環境などで色味が異なることがあります。何か疑問点があればご質問ください。なお取引はNC/NRでお願いします。落札された方は必ず落札後48時間以内に手続きを開始するようお願いします。評価が極端によくない方や「受取り通知をしてくれない」という悪評価が多数ある人は入札を取り消して、次点の方を繰り上げる場合があります。（2024年 11月 14日 20時 47分 追加）遅くなりましたがこの尺八の音色です。参考にしてください。https://youtu.be/HJfosYCHHgE