稀覯盤米KAPPアン・シャイン、ショパン&彼と縁深い作曲家による練習曲集NM

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練習曲作品から7曲を、B面にはショパンの練習曲集作品10及び作品25並びに遺作からの抜粋10曲を収録した他に類を見ない珠玉の練習曲集だからである。実に音楽的論理性のある興味深いコンセプトによるもので、また一方で彼女の比類無い多様性のある藝術の精髄が凝縮された1枚である。このLPが米国で発売されるや、このやうな画期的な内容の技巧的にも間然するところの無い名盤が芳紀20歳のピアニストによって録音されたことにピアノ界の大御所チェイシンズを始め数多くの評論家が感嘆し同業ピアニストは驚愕し震撼したと伝えられる。アン・シャインのピアニズムの特徴は、ポーランド出身の名教師ミェチョスワフ・ムンツ(⇒※)の4年間に亘る厳格な指導を通じて培われた超絶的な技巧とダイナミズム、そしてワシントンポスト誌の評論家が『かつてピアノという楽器から生み出された最も魅力的に富む』と評した明澄艶美な音色、それに加えるに知的で洗練された清冽な歌心である。※Mieczyslaw Munz [1900.10.31 ポーランド南部クラクフ~1976.8.25 ニューヨーク]クラクフ音楽院で伝説のイェジ・リャレヴィッチ(セイント・ペテスブルク音楽院でA.エシポヴァに師事)に学んだ後、ベルリン大学でフェリッチョ・ブゾーニの薫陶を受けている。1925年、閨秀エチェル・レギンスカ失踪事件の際、演奏旅行から帰国したばかりの彼が彼女の代役でカーネギー・ホールで演奏し絶賛された伝説を有する。欧米を中心に華々しい演奏活動を行い高い評価を得たが右手の故障で早い引退を余儀なくされた。しかしその後は名教師として数多くの名ピアニスト、アン・シャインを始めとしてエマニエル・アックス、フェリシア・ブルメンタール、イレーナ・ヴェレット、ユージン・インジック、ウォルター・ハウイッツ、アントニオ・ボルボサらを育てた。彼女はこのデビュー盤以降もショパンのスケルツォ全集、そして正式デビュー演奏会で弾き絶賛を博したラフマニノフの第3協奏曲等の優れたLPを次々と録音し、その間も米国、欧州楽壇で多忙な演奏活動を続け各地で絶讚を博した。1966年には米国国務省の派遣でアジア各国へ楽旅を行い、日本へも6月に来訪し東京を始め各地で演奏会を開いた。その折にリサイタルを聴いた故藁科雅美氏は、来日記念録音盤のライナー・ノーツに氏独特のユーモラスな筆致で次のやうに誌している。「・・・東京上野の文化会館小ホールでのリサイタルには多大の期待を抱いて出かけて行ったのでしたが、正直に言って、映画やテレビのスターに負けない彼女の美貌に接することもその夜の大きな楽しみでした。そして私の眼と耳の願望はともども充分に充たされたのです」。その後もソリストとしての国際的な活動とともにヴァイオリニストとのデュオも活発に行い、閨秀ヴィルコミルスカと録れたプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ集は誉れ高い名盤の一つである。近年、彼女の藝術は益々円熟を加え、ショパンのソナタ第3番、前奏曲全曲、やシューマンの第2番のソナタ等の録音は高い評価を受け、またマンネス音楽院教授として後進を育成する傍ら演奏活動も行い、 最近もコンクールの審査員を務めるなどなお矍鑠として活躍している。当LPのライナーノーツ冒頭に『練習曲は本来ピアニストの技巧的な熟達を目的とするものだが、このLPの練習曲の数々はそれを超越した特異な目的を有する。即ち、このLPは本質的に音色の練習曲集なのである』とあり、様々な作曲家の練習曲を通じ異なる多彩な音色を鑑賞できる利点に触れているが、当LPの制作コンセプトと思われるショパンと何かしら絆を有する作曲家の練習曲作品の内容については全く言及していないので補足説明を加えておきたい。まずA面の第一曲、ショパンに献呈されたドビュッシーの練習曲から「組合されたアルペジオのために」だが、中間部の洒脱な曲想のリズミカルな箇所を挟み前後に優美なアルペジオが様々な和音の変化とともに弾かれていく。アン・シャインの微妙に変化する玲瓏たる音色の美点が最高に活かされ夢見るように美しい。フランソワも名演(旧録音)を残しているが作品を自分の方に引き寄せた即興的な演奏で、作品の真諦を表現しているのはアン・シャインの方であろう。ポーランド楽壇の重鎮であったシマノフスキの「4つの練習曲」の第3番は彼のピアノ曲中で最も人口に膾炙した作品で、ショパンとスクリャービンの影響が色濃く表れ異様な力感が漲り辛辣さが漂うところが印象的だが、その翳に潜む一抹の寂寥感をアン・シャインの繊細なタッチによるピアニシモが見事に描き出している。パデレフスキがこの作品を激賞して愛奏曲に加え、また彼の弟子であるマルツジンスキの名演も残されている(LP:英Columbia)が、シマノフスキの心の襞に触れ得たのはアン・シャインの方かもしれない。同じくポーランドのブレスラウに生まれたモーリッツ・モシュコフスキもまたショパンを敬愛したピアニスト兼作曲家であって、彼が好んで演奏していたのは自作の他ショパンとメンデルスゾーンの作品だった。この「15の巨匠的な練習曲」中、随一の難曲をアン・シャインの右手が軽やかかつ滑らかにプレストで疾駆する。その演奏時間は驚異的な1分23秒。これは超絶技巧を誇りアルカン作品も得意としているマイケル・ポンティの録音と全く同じタイムだがアン・シャインはポンティより遥かにメロディを歌っている。スクリャービンが『最初の音楽的熱情を注いだ一人はショパン(アンリ・ド・ラ・グランジュ)』でその繊細でサロン的な面の影響を強く受けているが、ここに聴くアンダンテ・カンタービレの作品8-11(当LPジャケットには8-7と誤記)のショパン風の甘美な旋律には若きスクリャービンの清爽たる抒情が横溢しておりアン・シャインも心からの共感をもって歌い上げている。『最初の有名な作曲は、美しい嬰ハ短調の練習曲作品2の1であり14歳の少年によって書かれたものとしては、表現力に富み、美しく繊細な作品(同左)』も同様にショパンの強い影響を感じさせるがアン・シャインの哀愁を漂わせたロマンチックな演奏はリヒテルやホロヴィッツの演奏よりも遥かに曲想に適っている。ラフマニノフはショパンの作品を終生愛惜しショパン演奏家としても高名で歴史的名演の《葬送》ソナタを始め数多くのショパン作品を音盤に刻み、またショパンの前奏曲集作品28の第20番を主題とした《ショパンの主題による変奏曲作品22》という演奏時間30分に及ぶ大作を残している。この練習曲《音の絵》第7番には作曲家自身による《市場の光景》という副題があり賑わう市場の風景や人々が表現されているが、アン・シャインの幅広いデュナーミクと力感に溢れた朗々たる演奏で聴くと改めて彼女のピアニズムが優雅で繊細な面と重厚な面の双方を備えていることを得心し、彼女がラフマニノフの第三協奏曲をとりわけ得意のレパートリーとしていることも肯ける。ショパンは演奏家としてのリストを高く評価し作品10の練習曲集を献呈したが、両者の音楽の性格や傾向は正反対だった。この《小人の踊り》に聴かれる多くの装飾音を伴うテーマで小人の描写する標題性はショパンの藝術とは全く隔絶しているが、アン・シャインの美しいタッチと卓越したピアニスティックな技巧で演奏されると眼前に優美な妖精が乱舞しているかのやうな幻想に囚われる。演奏時間は驚異の2分50秒!稀代の名演であるシフラのライヴ録音(1978年)の2分47秒に並ぶ。ちなみにC.カーゾンのリスト・リサイタルに収録されている同曲は3分14秒だが平均的なところは3分30~45秒。B面は全てショパンの練習曲集からの抜粋10曲だが、演奏効果を考慮し選曲、配列に工夫を凝らし収録されていることが判る。まず作品25から第1番から始まる3曲だが、ブリガリア生まれでパリ・エコール・ノルマルで学んだピアニスト兼作曲家のアンドレ・ブクレシュリエフ(1925~1997)は第1番について「色彩の巨匠ドビュッシーの言う『リズム全体にいきわたる光の粒』、その未来をショパンが先駆けている」と誌している。アン・シャインの両手の分散和音から優美なメロディーが浮かび上がってくる箇所は彼女の磨き抜かれた技巧と色彩豊かな音色が最高に活かされている。第2番は「二声の旋律線をルバートなしに、玉をころがすようにプレストで弾く」曲だがブクレシュリエフが云うには「美しい対旋律が聞こえてくるが、それを目立たせすぎると下品で、自己満足に陥る」。知的で洗練された音楽性を有するアン・シャインはそのやうな陥穽とは全く無縁である。第3番は「アタックを多様にするすべを知っていて、音符を強調するすべを知っているならさらに楽しくなる曲だ」が、アン・シャインが右手の親指で楽しみながら鍵盤を突いている様が彷彿する(とはいえ実際には他の軽快に動く指の陰に隠れて親指を見ることはできないだろうが)。第9番、通称《バタフライ・ウィング》、右手はオクターブのスタッカート、一方「問題は左手で、全く危険な跳躍だ。どこを見ればいいのだろうか」とブクレシュリエフは嘆息するが(後半リテヌートからの二小節の各アタマ)、アン・シャインが”ミスタッチ”(wrong notesを弾く)ことはまず有り得ない、たとえライヴにせよ。次の『音楽的には妖精的ともいえるロマンチックな甘さに富んだ』変イ長調の遺作に聴くアン・シャインの真珠の珠のやうな粒立ちの音色による和声が連なっていく箇所は、まさに夢幻的な美しさである。この遺作を挟んで作品10が、第4番から始まり第10、第7番、第8番と進み第12番《革命》で締められる。まず「鬼神も之を避く」難曲の一つである第4番、「両手に十六分音符を交互に弾かせるこの曲の驚くべきダイナミックさは最も速く弾くことで獲得される」。アン・シャインの速さは聴く者に息を呑ませる2分00秒!第10番は「非常に美しい。ショパン的ハーモニーに浸りたい人は、喜びをもって耳を傾けることになる。両手の指と心の独立が課題だ(ブクレシュリエフ)」。ここでもアン・シャインのアーテキュレーションとアクセントの変化の妙に感嘆する。第7番は『雪上の狩り」と呼ばれることもある晴朗な雰囲気の横溢する作品で、右手小指が旋律を奏する一方で左手が対旋律を奏するが、アン・シャインのレガートでの右手の的確な運指と歌わせ方の巧みさ、両手のバランスの良さなど実に卓越している。第8番アレグロは、アン・シャインのもっとも得意とする作品の一つであろう。「ピアニスティックなテクニックが大部分を占める作品の一つだ。むらのない低声部、それが優雅さを生み出し演奏に冴えを与え,より曲の魅力が生まれてくる(ブクレシュリエフ)」。安定したタッチの左手に支えられ鍵盤上を流暢に疾駆するアン・シャインの右手を目の当たりにみる思いがする。最後に置かれた第12番『革命』、「ショパンが書いた数少ない左手のための曲。左手の絶え間のない波の中の親指の動きが重要で、一方、右手は英雄的な呼びかけと答のモティーフを響かせる。最後は、予想外のカデンツ的身振りでハ長調で勝利を収める(ブクレシュリエフ)」。ポーランド出自の恩師ミェチョスワフ・ムンツ直伝であろうか、アン・シャインの左手の超絶的なピアニズムに情熱が迸り、彼女のショパンの人に対する真情を垣間見る想いがする。1961年の来日記念盤にも別録音が収録されていたが全ての面で当LP収録の演奏が遥かに優れている。このアン・シャインにとっての記念碑的名盤が、そのままのかたちで本邦で発売されることは終ぞなかった。一旦は1961年4月新譜で発売される予定だったが、おそらくA面収録のショパンと縁のある様々な作曲家の作品にポピュラリティが無いとの商策上の俗慮から見送られたものであろう。尚、その後、当LP収録のショパンの練習曲計10曲からの6曲と別アルバムからのポピュラーなショパン作品の寄集めで翌年1962年1月新譜で「ショパン・リサイタル」のタイトルで発売され、ジャケット写真にはラフマニノフの第3協奏曲のアン・シャインの大写しのポートレートが使用された。斯くして彼女のデビューアルバムは本邦ではオリジナルの形では発売はされず、彼女のピアノ藝術の粋を鑑賞する術も失われ、アン・シャインを美貌が売り物の凡百のショピニストといった大いなる誤解を生じさせてしまった。当盤の状態は実に綺麗でニア・ミントレベルである。両面とも全くといっていいほどノイズは聴かれず(第二面の針のリード・イン箇所でザザッというノイズが入るが楽曲には全く影響しない)、この稀覯盤としては滅多に見ない最高の一枚である。ジャケットは裏面が若干経年の汚れが見られるが、シーム割も破損もない完璧な状態である。尚、当LPはモノラル録音だが、ことピアノの音色に関する限り澄明感はむしろステレオ盤に優る。盤鬼西条卓夫『片耳禮讚』に曰く「特に音色だ。この点モノーラルは、なんというユニックな音の藝術品であろう!音の純粋性と纏まりが壓倒的に目立つ」。(参考)この米国のマイナーレーベルKAPPは、ポピュラーから始まり1959年頃からクラシックのLPの發賣を開始した。社長が元米DECCAの副社長だったデービッド・キャップであるからか、どこか盤質やジャケット・デザインが米DECCAに似ている。録音技術顧問にバルトーク・レコードでモノラルの名録音で鳴らしたピーター・バルトークを迎えたことが比類ない藝術的モノラル録音に大きく貢献している。

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